新しく立ち上げた会社が銀行口座を開設することは、以前よりはるかに難しくなっているようです。その5つの理由をまとめてみました。
新設法人の口座開設が難しい5つの理由
1. マネーロンダリング対策の強化
国際的なマネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金供与の対策が強化されています。これにより、銀行は口座開設時の審査をより厳格に行うようになり、顧客の身元確認(KYC: Know Your Customer)プロセスが徹底されています。
顧客が提出する書類の詳細なチェックや、その背景にある資金の出所の調査などが行われ、これが口座開設のプロセスを複雑にしています。
2. 規制の厳格化
金融機関に対する規制が国際的に厳格化されています。特に、金融危機後の規制強化により、銀行はリスク管理をより重視するようになりました。
これに伴い、新規口座開設の際の審査がより厳しくなり、特に新設法人や海外関連の顧客に対する審査が厳格化しています。
3. フィンテックの台頭
フィンテック企業の台頭により、従来の銀行業務が大きく変化しています。オンラインで完結する銀行サービスが増え、これにより銀行は新たなセキュリティリスクに直面しています。オンラインでの口座開設では、身元確認や詐欺防止のための手続きがより複雑になる傾向があります。
フィンテック企業とは、お金に関するサービスをもっと便利に、もっとかんたんにするために、最新の技術を使っている会社のことです。
例えば、スマホで簡単にお金を送ったり、受け取ったりできるアプリを作っている会社や、インターネットを使ってすぐにお金を借りられるサービスを提供している会社がフィンテック企業です。
フィンテック企業は、お金を扱うことをもっと速く、もっと安全に、そしてもっと手軽にするために、最新のコンピューター技術やインターネット技術を使っています。これによって、銀行に行かなくても、自宅や外出先からスマホやパソコンを使って、お金に関するいろいろなことができるようになっています。
簡単に言うと、フィンテック企業は、私たちが普段使っているスマホやコンピューターを使って、お金の問題を解決するための新しい方法を提供している会社です。
4. 経済制裁と国際関係
国際的な経済制裁や政治的な緊張が高まる中で、特定の国や個人に対する金融取引が制限されています。これにより、国際取引を行う企業や個人は、口座開設や金融取引において厳しい審査を受けることがあります。
5. 個人情報保護の強化
個人情報保護の観点から、顧客情報の取り扱いが厳格化されています。これにより、銀行は顧客情報の収集と保護に関する厳しい基準を遵守しなければならず、口座開設プロセスが複雑になっています。
これらの理由により、銀行口座を開設する際のプロセスが以前よりも難しくなり、時間がかかる傾向にあります。しかし、これらの措置は金融システムの安全性と信頼性を保つために必要なものであり、顧客と銀行双方の利益を守るために実施されています。
新設法人が口座を開設するための手順と準備
口座を開設するために必要な手順を一通りまとめてみました。
新設法人が銀行口座を開設する際には、以下の手順と準備が必要です。このプロセスは銀行によって若干異なる場合がありますが、一般的には次のようになります。
1. 銀行の選定
まず、どの銀行で口座を開設するかを決定します。手数料の少なさ、支店の立地、提供されるサービス(オンラインバンキングの機能など)を比較検討してください。
2. 必要書類の準備
一般的には次の書類等を準備します。
- 法人登記簿謄本(発行から3ヶ月以内のもの)
- 会社印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
- 会社の印鑑(実印、代表者印)
- 代表者の身分証明書(運転免許証、パスポートなど)
- 会社の定款
- 事業計画書(銀行によっては必要な場合があります)
- 口座開設申込書(銀行により提供されます)
私が開設した住信SBIネット銀行は、ネット専業銀行ですが「登記簿謄本」「代表者の身分証明書」「口座開設申込書」だけで開設することができましたので、とにかく簡単に口座を作りたい!という場合にはオススメです。それでいて、他行への振込手数料が130円〜145円と一般的な都市銀行と比べても安く設定されているのもうれしいポイントです。
3. 銀行への申し込み
上記の書類を準備した上で、事前に銀行と連絡を取り、必要な手続きや提出書類について確認してください。
銀行によっては、オンラインで申し込みが可能な場合もありますが、一般的には書類を持って直接銀行の支店へ行く必要があります。
4. 審査
申し込み後、銀行による審査が行われます。この審査には数日から数週間かかる場合があります。
5. 口座開設
審査に通れば、口座開設が完了し、口座番号やオンラインバンキングのログイン情報などが提供されます。
6. 初期預金
口座が開設されたら、初期預金を行い、口座を有効化します。初期預金の金額は銀行によって異なります。
注意点
銀行選びでは、将来的な事業展開や資金調達の計画も考慮に入れると良いでしょう。書類の準備や手続きには正確さが求められます。不明点があれば、事前に銀行に相談してみてください。
このプロセスを踏んでいけば、新設法人でもスムーズに銀行口座の開設が可能です。事業の成功に向けて、この第一歩をしっかりと踏み出しましょう。
銀行口座を開設する「奥の手」!?
その奥の手とは、口座を開設する前に日本政策金融公庫の創業融資融資の申し込みをするという方法です。もちろん申し込むだけではダメで、融資が可決する必要があります。
そのためには事業計画書をしっかりと作り込む必要がありますし、時間と手間がかかります。でも、どっちみち創業融資を受けるのであれば、口座を開設してから融資の申し込みをするのではなく、まずは融資を申し込む、融資が通ったら銀行側は「事業実態を日本政策金融公庫が調査済み」として口座開設をOKしてくれるのです。
融資の申し込みの際に記入する銀行名は、口座開設の交渉をしている銀行(できれば第二地銀や信金などが良い)を記入します。
そして融資が通ったら、それを持って「開設したい」と伝えればOKです。おそらく銀行も喜んで口座を作ってくれることでしょう。